パーソナライズとは?
英語の「personal」は「個人的な」という意味ですが、「パーソナライズ(personalize)」になると、「個人的なものにすること、個人に応じて変更したり作り変えたりすること」といった意味になります。マーケティングでは、顧客の属性や興味、趣味嗜好、行動などにあわせて、最適な情報やサービスを提供することを指します。属性とは一般的に、その人が持っている性質や特徴のことですが、マーケティングリサーチ(市場調査)においては、年齢、性別、居住地、家族構成、職業、収入など、調査対象者の特性データのことを指します。
従来のマーケティングでは、テレビなどでCMを流したり同じ内容のDMを送付するなど、不特定多数に向けたものが主流でした。しかし、インターネットの利用が浸透した今では、顧客の興味や行動が多様化しているため、発信する情報や方法も顧客ごとに変えてアプローチする必要があります。
そこで、パーソナライズによるマーケティングの施策をすれば、顧客にあわせて発信する方法や内容を変えることによって、コンバージョン率の向上などが期待できます。
WEBサイトや特定のページに訪れたユーザーの内、どの程度コンバージョンに至ったかを表す数値です。インターネット広告やECサイトで、効果を計るために用いるものです。
コンバージョンというのは「最終的な成果」のことです。例えば、ユーザーがWEBサイト上で商品の購入や、申し込みに至ることです。
カスタマイズとは違う?
パーソナライズに似ている言葉に「カスタマイズ」があります。カスタマイズとパーソナライズの大きな違いは「誰が行うか」にあります。カスタマイズは、顧客自身が欲しい情報や自分の好みにあわせて使いやすいように設定します。それに対してパーソナライズは、情報やコンテンツを提供する側が、顧客にあわせて最適化したものを届けます。
パーソナライズの活用例
自社がターゲットとしている顧客層によって、パーソナライズの手法も違ってきます。企業向けである「BtoB」と、個人向けである「BtoC」、どちらの場合でもパーソナライズは効果が見込めます。それぞれのパーソナライズの活用方法についてみてみましょう。
BtoB(企業向け)の場合
企業間取引であるBtoBは、個人を対象とするBtoCに比べると、購買に至るまで複数の人が関わり、商談の期間も長くなるという特徴があります。
以前は、見込客の発掘から提案、競合の排除、クローズまで俗人的な営業の力に頼っていましたが、企業活動でもインターネットの利用が当たり前になったことで、BtoBビジネスにおいても顧客の購買行動が変化しました。今ではBtoB企業の顧客の7割近くが、実際に営業と会う前にWEBから得た情報で購買意思を固めているといいます。
そうした中で、見込客の発掘や育成などのプロセスで、デジタルマーケティングを活用する企業が増えてきました。そこでパーソナライズを活用するとより効果的です。顧客のニーズや検討段階に応じてセグメントし、パーソナライズによって顧客が必要な時に必要な情報を先回りして提供することができれば、競合を排除し、商談のスピードアップなどに繋がります。
ビジネスでは、ターゲットなど何らかの指標をもとに区切ったまとまりのことを指しますが、マーケティングの分野では、世代や性別、地域、職業、所得、趣向、価値観といった属性で顧客をセグメントします。そうして分けられた1つひとつのセグメントを、「マーケットセグメント」「市場セグメント」などと呼びます。
例えば、化粧品は世代別にセグメントされることが多く、ドラッグストアなどの店頭では、女子中高生向けには可愛くてコスパが良いものを、40代女性向けには高価でもアンチエイジングに特化したものが陳列されているのをよく見かけます。
このように、効率よく利益をあげるためには、市場にどういった顧客層が存在するのかをセグメントし、そのニーズに一致したものを提供することが重要になってきます。
BtoC(個人向け)の場合
個人向けには、さまざまな活用方法が考えられます。例を挙げると、ECサイトで商品を買い物かご(カート)に入れると、その商品に類似した別の商品をおすすめとして表示する、または、おすすめの商品をメールで配信する、といった方法がよく行われています。また、検索エンジンで検索した内容に応じて広告を表示するのもパーソナライズの活用例です。
パーソナライズするメリットは?
自分が興味や関心のない、もしくは必要のない情報や商品・サービスを押しつけられても、顧客にとっては困惑するばかりで、企業への印象もあまりよくはありませんし、第一、効率が非常に悪くなります。パーソナライズならそうしたマイナス点を解決して、さまざまな効果を期待できます。
顧客は、自分を大切な個別の客として扱ってもらうことで、特別感を味わい、承認欲求が満たされるます。すると、その顧客の企業に対する満足度がアップします。つまり、顧客一人ひとりの属性や行動、要望に合わせて、提供する情報や対応をパーソナライズすることは、顧客満足度の向上につながり、最終的には、顧客と企業との結びつきを強め、信頼関係の構築に大きく貢献します。
例えば「口コミ」や「お客様の声」といったリアルな反応を、商品開発やサービスの改善などに役立てたり、店舗に来店した顧客一人ひとりにあわせて接客をするなど、パーソナライズによって顧客との信頼関係を築くことができます。
そして、顧客との信頼関係ができれば、継続的に商品やサービスを利用してもらえたり、店舗に繰り返し来店してもらえるなど、より強力に顧客を囲い込むことができ、顧客単価のアップが期待できます。
マーケティングにおいて情報の精度を高めることは重要です。パーソナライズを導入して、不特定多数の顧客ではなく、一人ひとりにフォーカスした顧客を知ることで、顧客情報をより詳細に集めることができ、結果として情報の精度が高まります。そして、その情報を活用すれば、さらに効率的なマーケティング施策が行えるようになります。
顧客インサイトをより深く分析することは、顧客自身も気が付いていないような真のニーズの掘り起こしにつながります。パーソナライズを実践することで、今まで自社製品を知らなかった層へも認知してもらえる機会を得ることができ、販路の拡大を図ることも可能です。
顧客の購買行動の裏にある潜在的な欲求のことです。顧客は自身のインサイト(人を動かす隠れた心理)に気づいていない場合もあり、企業はこれを明らかにすることで顧客のツボを突いた商品やサービスを提供することができます。
しかし、顧客インサイトはあくまでも潜在的な欲求であり、探ろうとしない限り偶然見つかるものではありません。また、顧客も気づいていないことから、質問すればすぐに答えが返ってくるわけでもありません。
顧客インサイトと「潜在ニーズ」は混同されることがありますが、異なるものです。例えば「痩せたい」という顕在ニーズがあるとします。なぜ痩せたいのかをさらに掘り下げると、「健康になりたい」「おしゃれな服が着たい」「自信を持ちたい」などといった「潜在ニーズ」が見えてきます。このように、潜在ニーズは欲求があるのにそれに気付いていない状態ですが、顧客インサイトはまだ欲求さえない状態を指します。
顧客インサイトは、商品やサービスを利用してみて初めてわかる感情だったり、当たり前のこととして見過ごしている課題だったり、さまざまなところに存在しています。そこで、顧客インサイトを見抜いて営業アプローチに活かすことが重要になります。
パーソナライズの注意点
パーソナライズを行う際には注意するべきこともあります。
顧客の行動や趣味嗜好などをもとに、情報を提供できることはパーソナライズの利点です。しかし、パーソナライズによって提供する情報に偏りが出すぎると顧客が手に入れられる情報の幅が狭まり、「情報が抑制されている」と思われる可能性があります。
パーソナライズする情報は、変化していく顧客のニーズや属性を常にチェックし、アップデートし続けることが重要です。人の感情は変わりやすく、好みは変化していきます。そのような顧客の変化に気付けないでいると、不要な情報を提供し続けることになり、結果として顧客が離れてしまう恐れもあります。
パーソナライズはデジタルだけでなく、ダイレクトメールなどのアナログでの施策でも効果を発揮します。しかし、アナログの場合は印刷費や発送費などがかかります。デザインにこだわればクリエイティブ面の費用も必要になります。したがって、アナログで施策を行う場合は、費用対効果を考えてターゲットを絞ることが重要になります。
パーソナライズを活用したサービスの事例
実際の企業やメディアでもパーソナライズを活用したサービスで効果を上げています。
Amazon の「レコメンド機能」
例えば、ECサイト大手のAmazonは、「レコメンド機能」を利用しています。Amazonで買い物をすると「この商品を買った人はこんな商品も買っています」という案内が表示されますが、これもパーソナライズを活用した施策です。
レコメンドとは「おすすめ」のことで、閲覧履歴や購入履歴、購入頻度といったあらゆる情報をもとに、顧客が欲しがると想定される商品を表示します。Amazonでは、商品をかごに入れたときや、Kindleで書籍を読む前と読んだ後にレコメンドを表示して、顧客の購買意欲を刺激しています。
メデュラの顧客の髪質に合わせたシャンプー&リンス
女性向け定期通販サービス「メデュラ(株式会社Sparty)」が発売した、個々の髪質に合わせたシャンプー&リンスもパーソナライズした商品です。公式サイトで7つの質問に回答すると、100以上の処方からカスタマイズして、自分の髪の状態に合った成分を配合したシャンプーとトリートメントがつくられ、1〜2週間ほどで届くというサービスです。そして、その後もマイページ上で担当スタイリストが継続してサポートするサービスも提供して、さらに顧客満足度を上げています。
ユーザーが興味のあるニュースを表示するキュレーションメディア
キュレーションメディアは、決まった条件に沿って情報をまとめたコンテンツを公開しているサイトです。このような、顧客が興味を持っているジャンルやテーマにもとづき、WEB上に掲載されているニュースを選定して表示するプラットフォームもパーソナライズを活用した例と言えます。
例えばGunosy(グノシー)では、TwitterやFacebookなどのSNSと連携でき、それぞれのアカウントの連携データよりそのユーザーが興味を持つ分野をパーソナライズすることができます。これにより、ユーザーが知りたいニュースが優先的に配信されるので、情報を適切に手に入れられるという満足度が高まります。これもパーソナライズを活用してサービスへの評価を高くする効果を狙った例です。
効果的なDM発送で2本目の眼鏡の購入が増加したメガネスーパー
メガネスーパーでは以前月に2回、眼鏡の購入者にお礼状代わりのDMを送っていました。このDMを、眼鏡を渡してから1週間後に送付のタイミングを変えたのです。
購入した眼鏡を実際に使ってみると、遠視用を購入した高齢者が手元用眼鏡も必要だと気付いたり、近視用眼鏡を購入した人が運転用に度付きサングラスも欲しいと気付く、などといったケースがあります。そのタイミングで購入した顧客にあわせた内容のDMを送ることで、送付先のうち約0.4%が再び来店し、2本目の眼鏡の購入率は2倍近くに伸びたそうです。これもパーソナライズを活用した成功例と言えます。
パーソナライズによる対応はいまや不可欠!
パーソナライズは、デジタルやアナログに関係なく、それぞれの顧客にあわせた情報やサービスを提供するマーケティング手法です。パーソナライズして一人ひとりに最適化したコミュニケーションにより顧客との信頼関係を築くことができ、単なる売上を伸ばすだけでなく、顧客満足度を向上させ、それにともなった実績を生み出します。
しかし、インターネットの利用が当たり前になり、消費者の価値観や好みの多様化が急速に進んでいます。その中で、顧客の購買基準は「その商品・サービスは自分の好みに合っているか?」という、とても複雑で判断しにくいものになっています。デジタルマーケティングや広告分野でのパーソナライズに比べて、商品やサービスそのものをパーソナライズ化していくことはコストや労力がかかることから、収益面での課題は大きくなりますが、最近進歩が加速しているAI技術の利用により、商品やサービスにおけるパーソナライズ化も可能になってきています。
顧客の購買に対する意識や行動が複雑になった今、収益面での課題もクリアしながらパーソナライズへの対応を進めていかなければ、顧客獲得競争から脱落してしまいかねないのです。
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