CRM でクロスセルを伸ばして売上数アップ

新規顧客の獲得にはコストがかかる

営業活動をする上で、一般的に売上を上げるためには新規顧客の開拓が行われます。しかし、新規顧客を獲得するのはコストが高くなりがちです。そのため、既存の顧客あたりの売上単価を上げることは、効率の良い売上向上策のひとつとなります。また、市場が縮小傾向にあり、かつ新興企業が乱立する現在の日本では、顧客一人ひとりと継続的な関係を保つ必要があります。

そこで、固定客との関係を継続しながら、売上を上げる営業の手法として「アップセル」が有効と考えられています。しかし、アップセルは売上単価を上げることになるため、それだけでは効果がを出すのが難しいこともあります。

そこで、顧客単価の向上を図るのに、アップセルと併用するのが効果的だとされる手法が「クロスセル」です。アップセルにより「売上単価」を上げ、クロスセルにより「売上数」を増やせば、相乗効果で顧客単価を大幅にアップできるという考え方です。

クロスセルとは?

クロスセルとは、「他の商品などを併せて購入してもらうこと」を意味します。既に提案や説明をしているメイン商品(またはサービス)に関連させてその他の商品なども併せて購入してもらうなど、プラスアルファの上乗せをした販売を実現させる営業手法のことを指します。

クロスセルのメリット

クロスセルがうまくいった場合、以下のような成果が挙げられます。

顧客契約単価の上昇
顧客から自社に対しての印象や認知度が向上
リピートビジネスにつながりやすい

クロスセルの成果が出ることで、認知度・満足度が向上してリピート率が上がったり、取引した顧客からの紹介により新規見込み客の質や精度が上がるなど、中長期的に見てもクロスセルは売上に貢献してくれます。

特に取引を通じて満足してもらえた顧客からの紹介は精度が高くなり、通常の紹介より成約率の向上に貢献すると考えられます。

クロスセルを成功させるには?

クロスセルを成功させるには、2つのポイントがあります。

顧客情報の収集

クロスセルを実行したい顧客の情報をどこまで知っているかが重要です。その顧客情報を営業とマーケティング部門でどこまで共有ができているかもポイントになります。

少なくとも知っておく必要がある情報として、

  • 自社製品が採用された理由
  • 自社の前に採用されていた企業とその理由
  • その他競合となる同業他社の最新動向
  • 顧客が近い将来注目している分野

まずは顧客との関係を良好にすること、そこから得た情報を適切にマーケティング部門と営業とで情報共有されることが重要です。

獲得した顧客情報の再分析

営業担当者があまり苦労をしなくても注文をもらえた場合、その顧客のことはあまり重要視しない傾向があります。逆にしっかり営業して獲得できた顧客には思い入れがあり、実施したアプローチの内容や顧客の情報を事細かに覚えているものです。

営業担当者が必死で取得した生きた情報がある顧客にはすぐにアクションをかけられますが、それほど苦労せず注文を取ることができた顧客を効果的に攻めるためには「再分析」という準備が必要になります。

顧客情報のバラツキを均質化してから活動をすれば、質の高いクロスセル活動ができます。

クロスセルを実践する方法

クロスセルはむやみやたらに実施しても効果は出せません。質の高いクロスセルが実施するには、対象とする顧客を抽出・分析してクロスセルを行う優先順位付けやそれぞれの顧客に合わせたアプローチを検討するなど準備をした上で実践することが効果的です。

クロスセルの具体的な始め方

クロスセルを実施する対象となる顧客を抽出して分析する手法としては、 List(顧客リスト)、What(行動内容)、Pace(頻度)でマッピングして対象顧客を抽出する「LWP」というフレームワークがあります。

1
顧客の状況を洗い出し

対象となる顧客リストを洗い出してフラグ付けをします。

2
マッピング

フラグ付けした顧客リストを整理して優先度を付けます。

3
顧客の選定とアクションの立案

マッピングで付けた優先度の高い顧客からアプローチ案と計画を立てます。

LWP分析とは

顧客リスト(List)、これまでの顧客や自社の行動内容(What)、受注や訪問頻度(Pace)として、その3つの項目でマッピングして対象顧客を抽出する手法です。

L → List(顧客リスト):対象となる顧客リストをもれなく洗い出します。
W → What(内容):これまでの顧客の行動に対して顧客のポテンシャルはどうかをフラグ付けします。
P → Pace(頻度):顧客との接点、頻度はどれくらいかをフラグ付けします。

フラグ付けした顧客リストはランク付けをしてマッピング(下図参照)をします。「拡大余地」「実績」の2軸で、カテゴリーA~Dにそれぞれの顧客リストを割り当てます。カテゴリーは対応の優先度によって定義されており、以下の通りです。

 A=実績も多く拡大余地もある
 B=開拓営業先候補
 C=現状維持が最優先
 D=ビジネスの余地が見込めない顧客

LWP分析のマッピング

マッピングを活用したアクション立案のポイント

アクションの立案では、マッピングした顧客リストを元にどの顧客へアプローチすればいいかを考え、アクションに落とし込みます。まずは A より攻め、新たな顧客開拓のため B へと活動の幅を広めることが有効です。

もしマッピングをしなければ、拡大が見込めなくても実績のある C の顧客の方が営業しやすく、そちらへ行きがちです。しかし、行きづらくても、拡大余地のある B の顧客にアプローチしてみることで、売り上げに貢献できる可能性が増えると予想できます。

ポテンシャルはあるものの頻度が低い顧客の場合は、別商材の提案をするなど工夫が不足している可能性があると予想できます。

このように、この手法を採用することにより、

  • やみくもに(または惰性で)営業活動を行って時間を無駄にする
  • 顧客へのアクションバランスが偏っており、的確な活動ができていない
  • 顧客に適したアクションではないため、反響や引合いにつながる確率が低い

といった問題に陥ることを回避しながら効率的にクロスセルを実施することが可能になります。

クロスセルの実践例

身近なところでクロスセルが活用されています。その実践例をみてみましょう。

L(顧客リスト)の活用例

アマゾンなどネット通販ポータルサイトを見ていると、「この商品をご購入された方はこんなものも興味を持っています」のフレーズで関連商品がポップアップやサイドに表示された経験があると思います。

こうしたサイト運営やEコマース業界の AI や傾向分析によるクロスセルでは、注文を検討しているタイミングで人手をかけずに売り込みが出来るため、効率やコストがかからない点で上手く活用されている例です。

W(行動内容)の活用例

大型小売店

もっと原始的なものとして、スーパーでレジ待ちの列に並んでいると自然に目に入ってくるようにガムやライターなどが陳列されているのもクロスセルの実践例です。消耗品の「買い忘れ」「どうしても必要なものではないが、あれば使う」ものをクロスセルしています。

ファーストフードチェーン店

「ご一緒にポテトやドリンクはいかがですか?」というお馴染みのフレーズが聞かれます。これも立派な、売上拡大、顧客単価上昇のためのクロスセルです。

紳士服販売

「スーツ1着ご購入で2着目半額!」というフレーズがよく聞かれます。最近は関連商品(ネクタイ、靴、ワイシャツ)のラインナップをそれぞれの商品の専門店に負けない水準で揃えて、「関連商品のディスカウント」を謳って宣伝している企業があります。

P(頻度)の活用例

生活協同組合や総菜宅配業

食品や生鮮品を定期的に配達することで、定期的な顧客として囲い込むことができる業態です。これにより「毎週の顧客販売」を確実なものにしています。

また毎週配布する発注用チラシに「旅行」「お中元」「保険」など関連の深いものから季節ものまでクロスセルを行っています。チラシを目にする人数には限りがありますが、確実に目を通してもらえるという意味でクロスセルの頻度を安定化できる事例と言えます。

LPW を包括的に実践している例

自動車販売会社各社

自動車販売店のショールーム来店やWEB上で情報を取ろうとすると

  • 現在乗っている車名
  • 購入した時期
  • ユーザーからコンタクトした目的(買い替えか、セカンドカー購入か等)
  • 購入予定時期
  • 求める機能や車に対しての嗜好

などを確認するアンケートやWEB登録フォームの入力を求められます。

それにより、車の販売会社はクロージングの時期、どの価格帯の車種を売り込むか、競合する他メーカーの車に対しての差別化などの戦略まで紐づいてくるデータベースを構築しています。

効率よく売り込みを始めるため、アンケートに設ける必須項目などで顧客情報を効率よく収集し、リスト分析に活用している例と言えます。

クロスセルを成功させるには

CRM で顧客を知り適切な訴求をしてクロスセルを実践

クロスセルを成功させるカギは「営業のプロセス管理」を実行できているか否かにあります。

徹底的なルールと仕組み作りをすることも重要ですが、一から作り上げるのは時間もコストもかかり、中小企業のように少人数で実務をこなしながら組織作りをすることは容易ではありません。そこで、今マーケティング業界での採用が広がりつつある、マーケティングオートメーション(MA)や CRM を取り入れて自動化して、人手を最小限にしながらアプローチをすることが良策です。

MA ツールや CRM を採り入れても、組織でクロスセルを意識して仕組みを作り実行する、という信念は同じです。属人化を防ぎ、仕組みでクロスセルを組織内で根付かせることが有効になります。

クロスセルを成功させるには顧客を知り、提案に活かすことが重要です。クロスセルを成功させているのは、顧客について詳しく把握できている企業です。把握した情報をもとに、どの商品やサービスをクロスセルできそうか、どれだけ拡大できそうかなどの仮説を立てる必要があります。

把握するべき事項としては、

  • 顧客の自社業界製品(サービス)の購入総額
  • 顧客の来年以降の景気動向
  • 顧客の今後の投資計画
  • 顧客の意思決定部門とキーパーソン

など他にもたくさんの事項があります。

営業担当は「売り上げに関連する顧客情報」を出来る限り掴むことから始め、「顧客が自社(自分)のためを思ってオススメしてくれている」「自社(自分)が得をできる」ならクロスセルを受け入れてくれることを意識しながらアテンドする必要があります。そのためには、これまでの信頼関係の深さが大きく影響します。

顧客との信頼関係を築くには、これまで顧客とやり取りした内容や感情の動きなどの記録が大いに役立ちます。その積み上げた顧客情報を共有することにより組織全体として顧客に対応していくことも重要です。また、営業担当のスキルを上げるための研修や実際の営業現場でのスキル伝授も必要になります。

こうした顧客情報の管理と共有、スキルの伝授には CRM の機能を活用することで実現することができ、飛躍的に営業活動が効率化します。

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